「理想の睡眠時間は8時間」には根拠がないらしい

「睡眠時間は8時間が理想」という説は昔からあるみたいですが、この説には根拠はあるのでしょうか? 実際には6時間の睡眠で充分な人もいるはずですし、逆に8時間寝たのに眠い人もいると思います。

睡眠関係の書籍で調べたところ、8時間という数値には科学的根拠はないらしいです。以下は「8時間睡眠のウソ。(日経BP社)」からの引用です。

本当に、これは誰が言い始めたのかわからないんです。体内時計の25時間周期の話でしたら先行研究があったわけですが、こっちはそれもないんですね。8時間眠るのがよい睡眠だというのは、謎ですよ。必要な睡眠時間は年齢によっても変わってくるし、そのうえで個人差もあるわけです。

また、快眠のための朝の習慣・夜の習慣 (だいわ文庫)には次のように書かれています。

睡眠時間の話をすると、「8時間睡眠をとらなくては!」という話をよく聞きます。1日24時間を3で割るとちょうど8時間なので、切りが良いということなのでしょうか。この「8時間」というのは、科学的研究によって導きだされた結論ではないということをあらかじめ、お伝えしておきます。

やはり8時間睡眠が最適という説は根拠に欠けているようです。

最適な睡眠時間は人それぞれ

睡眠時間には大きな個人差があるそうです。一般的な人の睡眠時間は6~9時間の範囲におさまるとされていますが、6~9時間というのは最大3時間も幅があることになります。

また、ショートスリーパー(短眠者)やロングスリーパー(長眠者)の存在を考慮すると、最適な睡眠時間の幅はますます大きくなります。

● 参考:必要な睡眠時間の目安

分類 必要な睡眠時間 人口比
ショートスリーパー(短眠者) 5時間以下 1%未満
6時間以下 5~10%
バリュアブルスリーパー(標準睡眠者) 6~9時間 87%
ロングスリーパー(長眠者) 9時間以上 5~10%
10時間以上 成人では1%未満

快眠のための朝の習慣・夜の習慣を参考に作成

これだけ睡眠時間の個人差が大きいにもかかわらず、なぜ「8時間睡眠が理想」という説が生まれたのでしょうか。いろいろな書籍を読んでみたのですが、これだ!という見解は見つけられず……。

ただ、個人的には睡眠時間の統計データが関係している可能性があると思います。次のグラフは国民生活時間調査(2015)からの抜粋ですが、1970~1980年までは平日に8時間睡眠をとっている人が多いことが見てとれます。

もしかしたら、こういったデータを元に8時間睡眠が理想という話が生まれたのかもしれません。

追記:自分にとって必要な睡眠時間を知るには

睡眠時間に個人差があることは事実だとして、大事なのは「自分にとって必要な睡眠時間はどれくらいなのか」です。それを知るためにはどうすればいいのでしょうか?

不眠の科学(朝倉書店)には、

休日など自由に眠れる日に長時間の睡眠をとっている状態では、まだ普段の睡眠時間は不足していると考えられる

と書かれています。なので、平日と休日の睡眠時間の差が大きいことは、必要な睡眠がとれていない証拠になると思います。逆に言えば、平日と休日で同程度の睡眠時間なら、それがその人にとって最適な睡眠時間ということになります。

平日と休日の睡眠時間の差が30分くらいなら気にする必要はないと思います。ただし、2時間以上の差がある場合は要注意です。睡眠不足症候群という睡眠障害におちいる可能性があるからです。

必要な睡眠時間を確保できずに慢性的な睡眠不足状態にある睡眠不足症候群は,昼間の眠気や倦怠感.頭痛.めまいなどの心身症状が出現する。本人は慢性化した睡眠不足状態を認識できていないことが多いが,平日の睡眠時間と休日の睡眠時間の差が2時間以上解離することが特徴的である。

引用:眠りの科学とその応用(シーエムシー出版)

しかし、「そんなこと言われても忙しくて今以上の睡眠時間は確保できない!」という人も多いはずです。そういう場合は、睡眠時間でなく睡眠の質に着目するといいと思います。ここで言う睡眠の質というのは、深い睡眠をしっかり確保できているか? ということです。

人間の睡眠は数段階の深さに分けられますが、とりわけ眠り始めの3時間には深い睡眠が現れます。この深い睡眠をとれないと、脳の疲労が回復せず、熟睡感も得られないと言われています。朝の目覚めもスッキリしなくなるため、ダラダラとした睡眠の原因にもなると思います。

逆に言えば、深い睡眠をしっかりとれれば、多少睡眠時間が短くても平気になる可能性があります。

● 睡眠時間と眠りの深さの関係

では、深い睡眠をしっかり得るためには何をすればいいのでしょうか? いろいろ考えられますが、たとえば「質の悪い睡眠をまねく夜のNG習慣7つ」で述べているような生活習慣を改善するのも一つの方法だと思います。

個人的には、就寝の3時間前には部屋の蛍光灯を消して暖色照明に切り替えると、睡眠が深くなるような感触があります。明かりを暗くしたことによって、おそらくメラトニン(眠りに不可欠な物質)の分泌が促進されているのだと思います。