セロトニンが不足するとどうなる?その症状と原因について

セロトニンは人間の脳内で分泌される物質です。心を安定させる作用があると言われています。また、朝起きて夜眠るという睡眠リズムにもセロトニンは関わっていて、私たちが健康的に過ごすために不可欠な物質と言えます。

しかし、ヘルスケア関係の書籍で調べたところ、現代型のライフスタイルにはセロトニンを不足させてしまう要因がたくさんあるようです。もしかしたらあなたの心と身体の不調にも、セロトニン不足が関係しているかもしれません。

そこでこのページでは、

  • セロトニン不足だとどんな症状が現れるのか?
  • セロトニンが不足する原因は何か?

についてまとめてみました。

セロトニン不足の症状は多岐にわたる

1.朝の目覚めが悪くなる

セロトニンは夜眠っている間にはほとんど分泌されませんが、朝が近づくにつれて分泌量が増えていきます。なぜ朝になると分泌が高まるのか、その理由は次の「マンガでわかる神経伝達物質の働き」からの引用を見るとわかると思います。

朝日を浴びると、睡眠中はほとんど休止状態にあったセロトニン神経系が活動を始め、セロトニンを分泌するようになる。同時にノルアドレナリンなども分泌され、脳が覚醒し、活動を開始するというわけだ。

(中略)

すっきり気持ちよく起きられるのは、セロトニンがしっかり働いているからだ。逆にセロトニンの働きが悪いと、なかなか脳が活動してくれない。朝起きるのもつらくなり、ずっと眠っていたくなる。

つまり、朝にセロトニンが分泌されるのは目覚めをうながすためです。セロトニンは脳と身体にスイッチを入れて、朝起きられるようにしてくれるんです。

しかし、何らかの理由のために朝になってもセロトニン分泌が高まらないと、脳と身体が休息状態から覚醒状態に移行できません。そのため、スッキリと目覚めることができなくなるのだとか。

なお、朝起きられないと次第に夜型の生活リズムになっていきますが、夜型生活はセロトニン減少に拍車をかけます。つまり、朝起きられない→夜型リズムになる→セロトニンが減少する→ますます朝起きられない……という悪循環が生まれやすいです。この悪循環に陥った場合、意識的にセロトニンを増やす対策をとったほうがいいと思います。

2.夜寝つきが悪くなる

朝の目覚めだけでなく、セロトニンは夜の眠りにも影響します。ただ、セロトニン自体が直接関わっているというよりも、セロトニンを元にして作られる「メラトニン」という物質が夜の睡眠に関係しています。

メラトニンは別名「睡眠ホルモン」と呼ばれている脳内物質で、次のような働きがあると言われています。

  • 深部体温を下げる
  • 副交感神経を優位にして、気持ちを落ち着かせる
  • 呼吸や脈拍、血圧を低くする

これらの作用があるために、メラトニンが分泌されると人間は眠くなります。しかし、何らかの理由のために充分なメラトニンが作られないと、寝つきが悪くなったり夜中に目が覚めたりといった「不眠の症状」が出てきます。

メラトニンの分泌が減る理由はさまざまです。たとえば、夜間に強い光を浴びるとメラトニン分泌が抑制されることが分かっています。
(詳細:メラトニンの分泌を抑制してしまう光の強さは何ルクス?

そして、セロトニンが不足することも、メラトニン分泌に悪影響をおよぼします。なぜなら、セロトニンはメラトニンの原料となる物質だからです。原料が足りなければ当然生成物は少なくなります。

● セロトニンはメラトニンの元になる

なお、加齢にともなってメラトニンの量は減ります。下記のグラフはメラトニン分泌量と年齢の関係を示しています。10代にピークを迎えたあと、メラトニンの分泌は減少の一途をたどります。

加齢でメラトニンが減る理由は明確には分かっていないようです。ただ、セロトニン不足(=原料不足)のせいでメラトニン生成量が減少している人もいるのでは……と個人的には思っています。後述しますがセロトニンを作るためには太陽の光を浴びることが重要です。しかし、加齢によって眼の水晶体がにごると、うまく太陽の光を受け取れなくなりセロトニンの生成が滞る可能性がでてきます。

そうなると結果的にメラトニン分泌は減少します。加齢による不眠にも、セロトニン不足が関係している可能性は充分にあると思います。

3.心が不安定になる

先に述べた2点はどちらも睡眠に関する事柄でした。しかしセロトニン不足による影響の中で、一般的によく知られているのは心の安定性が失われることです。たとえば、ささいなことで急に怒り出す(俗に言うキレる)ことにセロトニン不足が関係している、という話があります。

なぜセロトニン不足によってキレやすくなるのでしょうか。そのメカニズムは明確には判明していないようですが、セロトニンが不足すると脳内物質全体のバランスが崩れます。このことが原因のひとつと考えられています。

たとえばドーパミンという脳内物質があります。一般的にはやる気を生み出す物質として認知されていますが、脳内のドーパミン濃度が高くなると攻撃的になるという面も持ち合わせているそうです。セロトニンは、そんなドーパミンの働きを調節します。なので、セロトニンが不足すればドーパミンの働きが強くなって攻撃的になり、それがキレるという形で表れても不思議ではないと思います。

実際、ラットの実験ではセロトニン不足は攻撃行動を引き起こすという結果が出ているようです。これについては「夜更かし」の脳科学(中公新書)に詳しく載っていたので、少し長いですが引用します。

ラットを飼育している箱にマウスを侵入者として入れると、ラットはマウスを殺して食べてしまう。この行動はムリサイドと呼ばれる。ムリサイドは、セロトニン神経系の働きを抑えることで起きやすくなる一方、セロトニン系の働きを高めることで起きにくくすることができる。

(中略)

最近、独協医科大学の上田秀一教授の研究グループは、神経伝達物質のうち、セロトニン神経系とノルアドレナリン神経系をあらかじめ破壊しておいたラットに、ドパミンというまた別の種類の神経伝達物質を投与した。

このような特殊なラットを飼っておき、その飼育箱に普通のラットを入れた。すると、セロトニン系とノルアドレナリン系を破壊されたところにドパミンを投与されていたラットは、通常は攻撃行動前に認める挨拶などの社会行動なしに、突然強烈な攻撃行動を起こすことが観察された。上田教授は、この行動がヒトにおける衝動的攻撃行動(キレる子の行動)のモデルになる可能性を提唱している。

セロトニン不足は、キレること以外にもさまざまな症状との関連が指摘されています。たとえば、

  • うつ病
  • 不安症
  • 強迫性障害

もちろん、原因のすべてをセロトニン不足に求めることはできないですが、どの症状も脳内セロトニンを再利用する薬(SSRIなど)に反応する場合が多いようです。このことからも、セロトニン不足が関与している可能性は高いと考えられます。

セロトニンが不足すると、うつ病や不安障害になったり、イライラして落ち着きがなくなり、衝動的、攻撃的になると考えられている。

そのためうつ病など精神疾患に対する薬物治療では、セロトニンに作用するものが多く使用されている。そのほか、セロトニンは睡眠や覚醒、食欲や摂食障害、性欲にも関与していると推測されている。

引用:マンガでわかる神経伝達物質の働き(サイエンス・アイ新書)

「落ち込みやすい」「不安な気持ちになりやすい」「怒りっぽい」など、情緒不安定にもいろいろな形がありますが、セロトニンが足りないためにその不安定さが生まれているかもしれません。ちなみに私は不安感はあまりないですが、急に怒り出す傾向はあります。セロトニン不足の可能性大だと思っています。

セロトニンが不足する原因は3つある

1.太陽の光を浴びていない

体内でセロトニンを生成するためには、太陽光のような「強い光」を浴びる必要があります。

一般的な生活リズム(朝起きて夜眠る)を送っているのなら、日光不足になる心配はないと思います。朝、勤め先まで出勤するだけでも太陽の下を歩くことになりますし、日常生活でも洗濯物を干したり買い物に行ったりするときに、日光を浴びる機会があるからです。

しかし、夜勤やシフト勤務などで昼夜逆転することが多い場合は、日光不足になる可能性が高くなります。短期的に夜型生活になるのは問題ないはずですが、それが続くときには気をくばったほうがいいかもしれません。
(夜勤期間が終了したら、積極的に日光浴をするなど)

難しいのは、夜型の生活リズムが固定してしまった場合です。夜型のリズムになると朝起きるのが遅くなります。そのため太陽光を浴びる機会が減り、セロトニンが不足しやすくなります。セロトニンが少ないと、睡眠ホルモンであるメラトニンも減少します。それによってますます夜眠れなくなり、夜型生活がいっそう固定化する……そんな悪循環も考えられます。

また、すでに言及しましたが加齢の影響によって眼の水晶体がにごると光をうまく受け取れなくなり、スムーズにセロトニンが生成できなくなる可能性があります。早ければ40代から水晶体はにごり始めるそうです。休日の朝などは積極的に外に出て太陽光を浴びるのも大事だと思います。その際は、セロトニンを増やす運動(次段参照)を外でおこなうと一石二鳥です。

2.日常的に運動をしていない

セロトニンの分泌量を増やすには、定期的な運動も大切です。運動することによって、セロトニン神経という神経を鍛えることができるのだとか。セロトニン神経は脳内に張りめぐらされていて、セロトニンの分泌を左右しています。

しかし、昔と比べて体を動かす機会は確実に減っていると思います。交通機関は便利になりましたし、デスクワーク主体の仕事も増えました。買い物もネットで済ますことができます。便利になったことを否定するつもりはないですが、「体を動かさなくても大体のことは何とかなる」という現代の生活環境は、セロトニン神経を弱らせてしまう可能性が高いはずです。

これを改善するには、意識的に運動する時間を増やすしかないと思います。運動のなかでも、リズム運動と呼ばれるものはセロトニン神経を活性化する効果が高いと言われています。

リズム運動とは、一定のリズムで筋肉を緊張させたり緩めたりを繰りかえす運動のことです。ジョギングやサイクリング、水泳などが該当します。ほかにはエアロビクスやフラダンス、タップダンスなどもリズム運動と言えます。また、個人的な見解ではピアノやドラムなどの楽器演奏もリズム運動に該当するのでは、と思います。

運動不足に心当たりのある方は、簡単なものでいいので日常生活に運動を取り入れてみましょう。幸いなことに、リズム運動は15分くらいでもセロトニン分泌を増やす効果があるそうです。1日15分なら、運動する時間も確保しやすいはずです。

補足

外に出で運動するのが億劫な場合は、ステッパーやエアロバイクなどの器具を使えば家の中でリズム運動することが可能です。
(詳細:セロトニンが増える運動まとめ

3.セロトニンの原料が不足している

セロトニンは人間の体内で生成される物質ですが、その生成にはさまざまな栄養素が必要です。もっとも重要なのは、トリプトファンという栄養素です。

トリプトファンとは……

必須アミノ酸のひとつで、セロトニンの原料となる物質。人間の体の中では作れない栄養素なので、かならず日々の食事から摂る必要がある。肉類や魚介類、乳製品などに多く含まれている。

トリプトファンは動物性タンパク質(肉類や魚介類など)に多く含まれています。しかし、その反面野菜や果物にはほとんど含まれていません。そのため、肉類・魚介類などを極端に避けているとトリプトファン不足になる可能性があります。

食生活に気をくばっていれば日常の食事から充分なトリプトファンが摂れると思いますが、ダイエットをしている場合などは気をつけたほうがいいと思います。

ちなみにこのトリプトファンは体内に溜めておけないそうです。朝型勤務がダメな理由(日経ナショナルジオグラフィック社)には、次のように書かれています。

たとえすでに光療法の効果が出ている患者さんでも、トリプトファンが含まれない食事に切り替えるとわずか24時間で血中トリプトファン濃度は著しく低下し、同時にうつ症状が再燃してしまうことも分かっている。トリプトファンは次から次へとセロトニンを合成するのに使われるため、在庫をため込むことはできないのだ。

この内容を考慮すると、毎食ごとにある程度のトリプトファンは摂っておきたいところです。トリプトファンを多く食品まとめを参考にして、摂りやすい食材を探してみて下さい。

なお、セロトニンを作るためにはトリプトファン以外にも必要な栄養素がいくつかあります。たとえばうつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書)には、

鉄不足の場合には、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンが、必要なときにも作られないことから、うつ病やパニック障害と同じような症状を引き起こす原因になるのです。

と書かれてあり、セロトニン生成には鉄が不可欠と分かります。トリプトファン自体はセロトニンの原料ですが、原料だけでは不十分で、セロトニン生成を補助する栄養素が必要ということです。

また、他の書籍には「ビタミンB6」「ナイアシン」「亜鉛」「マグネシウム」などのビタミンやミネラルが、セロトニン生成時に必要という話が載っていました。実際にはもっと多くの種類の栄養素がセロトニン生成に関与していると思います。
(さらに詳しいことが分かったら追記します)