セロトニン症候群はトリプトファンを摂取したときも起こる?

トリプトファンはアミノ酸の一種で、セロトニンの原料になる物質です。一般的な食べ物から摂取できますが、サプリメントの形で摂ることもできます。

セロトニンを増やしたかったら、その原料のトリプトファンをたくさん摂ればいい……と言いたいところですが、気になることが一つあります。それは、セロトニンの量が必要以上に増えてしまうかも?ということです。

脳内のセロトニン濃度が異常に高くなると、発熱や吐き気、下痢、嘔吐などさまざまな症状が現れます。この症状の総称を「セロトニン症候群」と言いますが、最悪の場合では死に至ることもあるそうです。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ剤を過量服薬すると、セロトニン症候群になることが知られています。

では、トリプトファンを過剰に摂取するとセロトニン症候群は起きるのでしょうか。

トリプトファンの単独使用なら問題なさそう

トリプトファンによるセロトニン症候群について、少しですが言及している書籍がありました。

Lートリプトファンも, MAO阻害薬と組み合わさると、異常高熱危機(セロトニン症候群) の引き金となる恐れがありますから、 この組み合わせは避けるべき鎮静薬です。

(中略)

ジョナサン・コール博士と彼の同僚は, それまでに既に数週間以上にわたり, MAO阻害薬を服用してきた患者さんに対し、3グラムから6グラムのLートリプトファンを処方しました。しかし、 これらの患者さん方にセロトニン症候群の初期徴候が観察されたことから, このような薬の組み合わせから期待される利益は, 敢えて危険を冒すほどのものではないようにも思われます。

補足説明すると、MAO阻害薬というのは抗うつ剤の一種です。その抗うつ剤の効果を増強するためにトリプトファンを併用したとろ、セロトニン症候群の兆候が表れたという話です。

ここで注目したいのはトリプトファンの摂取量です。上記には3~6グラムと書かれていますが、これはかなりの高容量です。過剰摂取に該当する量と言えます。

トリプトファンのサプリを一日3グラムも摂取している人はかなり珍しいはずです。私自身サプリメントを使っていた時期がありますが、一日あたり多くても1グラムまででした(摂取目的は睡眠の改善)。

「トリプトファン過剰摂取+抗うつ剤」でようやくセロトニン症候群の兆候が発生するのなら、サプリメントを普通に使用しているかぎりはセロトニン症候群の心配をする必要はなさそうです。

気を付けたいのは他のサプリメントとの併用

トリプトファンの単独使用ならセロトニン症候群になる可能性はないと思いますが、ほかのサプリメントを使っているなら話は別です。

たとえばセントジョーンズワートというサプリメントがあります。これはハーブの一種で、うつ症状の緩和のために使われます。ドイツやオーストリアでは医薬品として扱われているそうです。

セントジョーンズワートが人体にどういう作用をおよぼすのか、完全には明らかになっていません。しかし、脳内セロトニンの利用効率を高めると推測されています。この作用はSSRIと似ています。

SSRIは抗うつ剤なので、「トリプトファン+セントジョーンズワート」の併用は「トリプトファン+抗うつ剤」の併用に近いと考えられます。そのため、トリプトファン単独使用よりもセロトニン症候群の危険性が高まると思います。

また、5-HTP(ヒドロキシトリプトファン)というサプリメントにも注意が必要です。トリプトファンと同じく、5-HTPもセロトニンの原料になる物質です。詳しく言うと、トリプトファンが5-HTPに変化し、そのあとでセロトニンに変化します。

■ セロトニンの生成過程

5-HTPとセロトニンは化学的な距離が近いため、そのぶんだけセロトニンを増やす効果が期待できます。しかし、裏を返せばセロトニン症候群の原因になりやすいとも言えます。

5-HTPは一般的な食べ物の中には含まれていませんが、サプリメントの形で摂取することができます。海外では、5-HTPはセロトニンを増やすサプリとして人気があるようです(日本では薬事法の関係で売られていません)。

まとめると……

  • トリプトファン単独ならセロトニン症候群の心配はない(過剰摂取しなければ)
  • トリプトファンと他のサプリの併用(セントジョーンズワートや5-HTP)は避けたほうが賢明