ベッドに入ってもなかなか寝つけない『入眠障害』の原因と対策

「ベッドに入ったはいいものの、なかなか眠れず1時間も経ってしまった……」

こうした寝つきの悪さに悩んでいる人は多いと思います。保健福祉動向調査の概況(平成12年)では、6人に1人がなかなか寝つけないと答えています。

ベッドに入ってから眠りにつくまでの時間のことを入眠潜時といいます。通常の入眠潜時は10~15分と言われていますが、この時間が30分以上かかると不眠の一種である「入眠障害」の可能性が出てきます。

睡眠障害の対応と治療ガイドラインには、入眠障害について次のように書かれています。

就床後人眠するまでの時間が延長して、寝つきが悪くなるもので、不眠の訴えのなかでは最も多い。一般的には入眠に30分~1時間以上かかり、本人がそれを苦痛であると感じている場合に入眠障害と判断される。

ときどき寝つきの悪い日があるだけなら入眠障害ではありません。たとえば休日に朝寝坊したために、夜になっても眠くならないことは誰にでもあると思います。このような一過性の眠れない状態は入眠障害とは違いますし、数日たてば元の睡眠リズムに戻るはずです。

しかし、入眠障害は長期間にわたって(たとえば一か月以上)寝つきの悪い日々が続くそうです。寝つきが悪ければ、その分の睡眠時間が削られます。そのため、入眠障害をほうっておくと慢性的な睡眠不足におちいる危険性があります。

では、そんな入眠障害の原因は何なのでしょうか?

準備モードを作れていないから眠れない

睡眠関係の書籍をいくつか調べてみたのですが、眠れない原因は多岐にわたるようです。ただ、その原因を一言で言うと次のようになると思います。

「眠るための準備ができていない」

基本的に人間は日中に活動し、夜になると睡眠をとります。日中起きているときを「活動モード」、夜寝ているときを「休息モード」と表現できると思いますが、ここで重要なのは活動モードから休息モードには急に変われないことです。

たとえば部屋の電気のスイッチをONからOFFにするのは一瞬です。しかし、人間の身体はそう簡単に切り替えることができず、活動モードから休息モードに移行する前に準備モードのようなものが必要なのだとか。

少し長いですが、下記は睡眠のはなし(中公新書)からの引用です。

活発に動いている状態や頭を使っている状態と、眠る状態の間には、だるくなって能率が悪くなる状態、ぼうっとしている状態、どうしても眠りたくなる状態がある。この状態を経て、初めて眠る状態にたどりつく。このなんとなく役に立たないような覚醒と睡眠の間のぼおっとしたリラックス状態が実に眠りには重要なのだ。

「覚醒と睡眠の間のぼおっとしたリラックス状態」というのが、準備モードだと思ってください。これがうまく作れていないために、なかなか寝付けないということです。

では、なぜ準備モードが作れないのでしょうか。その代表的な原因は、2つに大別されると思います。

  1. 脳内物質のメラトニンが分泌されていない
  2. 脳内物質のギャバが優勢になっていない

以下、この2点を詳しく述べていきます。

脳内物質のメラトニンが分泌されていない

メラトニンは、脳の松果体(しょうかたい)から分泌される物質です。別名「睡眠ホルモン」と呼ばれていて、次の作用を持っています。

  • 深部体温(体の奥の体温)を下げる
  • 副交感神経を優位にする
  • 呼吸や脈拍、血圧を低くする

イメージで何となくわかると思いますが、これらの作用はすべて人間の活動レベルを低下させます。一番わかりやすいのは深部体温でしょうか。たとえば、テレビや映画などで雪山で遭難し、隣にいる相棒に「寝たら死ぬぞ!」と主人公が叫ぶ……そんなシーンがありますよね。あれは、体温が低下する→活動レベルが下がる→眠くなる、ということなのだそうです。

もちろん、メラトニンにそこまで大きな体温低下作用はないですが、睡眠への移行を助ける程度に深部体温を下げてくれます。

通常、メラトニンの分泌は夜21時くらいから高まり、深夜にピークをむかえます。しかし、何らかの理由でメラトニン分泌が増えないとどうなるでしょうか。深部体温が下がらす、交感神経も優位で、血圧なども高いままです。これでは、なかなか寝付けないのも当然だと思います。

では、なぜメラトニンの分泌が高まらないのでしょうか。主要な原因は、おそらく夜間照明の影響です。メラトニンの分泌量は、夜に光を浴びると減少します。しかも、一般的なリビングの明るさ程度の光でも2~3時間浴びればメラトニン分泌に悪影響があります。
(詳細:メラトニンの分泌を抑制してしまう光の強さは何ルクス?

このことを考えると、就寝の3時間ほど前から照明を暗くすることが重要です。しかし、蛍光灯の白色光をそのまま暗くすると、寒々とした暗い印象になってしまうと思います。なので、夜になったら蛍光灯から暖色照明に切り替えるようにしましょう。イメージとしてはホテルの室内照明です。

暖色照明は照度が低めですし、独特のリラックス効果もあります。また、蛍光灯の光に比べてブルーライト(青色光)の含有量が少ない点もメリットです。最近メディアで触れられる機会も多いですが、ブルーライトは人体にさまざまな影響をもたらします。そのひとつは覚醒度を上げることです。

昼間なら覚醒度が上がることはむしろ好都合と言えますが、夜は別です。眠れなくなってしまいます。「時計遺伝子」の力をもっと活かす!(小学館)には、青色光とメラトニンの関係について

たった8ルクスであっても、白色光の1200ルクスと同様の悪さをします。

と書かれています。このことを踏まえると、できるだけブルーライトの少ない照明、つまり暖色照明を夜に使うことは寝つき改善のために重要だと思います。

補足

もうひとつ付け加えるとすれば、メラトニン分泌量は年齢を重ねるごとに減少します。これが入眠障害の原因になっている場合も多いと思います。

年齢の影響については「加齢による不眠にはメラトニンのサプリメントを試す価値あり」で詳しく述べています。

脳内物質のギャバが優勢になっていない

※2017.10.19
この段落については不正確な内容が多かったので、見直しを行ったあとに更新します。