トリプトファンの効果を引き出すための摂取タイミング

トリプトファンはアミノ酸の一種です。肉類や魚介類に多く含まれていて、体内に取り込まれた後でセロトニンやメラトニンに変化します。セロトニンは精神を安定させる物質、メラトニンは入眠をうながす物質です。

精神安定や安眠効果などを期待して、トリプトファンのサプリメントを利用している方も多いと思います。私自身も、毎日ではないですがトリプトファンのサプリを使っています。

しかし、漫然とサプリメントを飲んでいては、せっかくの効果を享受できない可能性があります。トリプトファンの効果を引き出すためには、飲み方に工夫する必要があるんです。その工夫というのは、

  • 空腹時に摂る
  • 糖分と一緒に摂る

の2点です。

空腹のときはトリプトファンが脳に入りやすい

まず一つ目のポイント「空腹時に摂る」についてです。一言で言うと、空腹時にはトリプトファンが脳内に到達しやすくなります。

どういうことなのか、少し詳しく説明します。

食べ物やサプリから摂取したトリプトファンは、血液の流れに乗って脳内にたどり着き、セロトニンやメラトニンに変化します。その結果、精神安定や安眠などの作用が生まれます。

裏を返すと、トリプトファンをいくら摂っても脳内に到達しなければ効果が得られません。そして、困ったことにトリプトファンが脳内に届かない可能性が実際にあります。

トリプトファンは、単独では脳内に入れません。ある種の「輸送体」の力を借りる必要があります。たとえて言うなら、トラックのような乗り物に載せてもらうことで、脳の中に入れるようになります。

しかし、このトラックはトリプトファン専用ではありません。ほかのアミノ酸の運搬にも、同じトラックを使います。なので、血液中にトリプトファン以外のアミノ酸がたくさんあると、それらのアミノ酸に席を奪われてしまいます。すると定員オーバーになってトリプトファンが載れなくなります。

つまり、トリプトファンの脳への輸送は、ほかのアミノ酸に邪魔をされてしまうということなんです。脳に到達するトリプトファンが減れば、セロトニンやメラトニンも増えません。サプリメントを摂っていても、その効果を得にくくなります。

ところで「ほかのアミノ酸」と先ほどから書いていますが、具体的には何なのでしょうか。これは、食事に含まれているタンパク質由来のアミノ酸のことです。

タンパク質が分解されるとアミノ酸が作られます。その中には、もちろんトリプトファンも含まれていますが、別のアミノ酸もたくさん含まれています。とくにバリン、ロイシン、イソロイシンの3つのアミノ酸は、トリプトファンの輸送を妨げることが知られています。

食後しばらくはアミノ酸の血中濃度が高いです。タンパク質が分解されてできたアミノ酸がたくさんあるからです。そのため、トリプトファンはなかなか脳内に入っていけません。

しかし、空腹時なら、それまでに食べた食事の大部分は消化されています。アミノ酸の血中濃度も下がっているはずです。トリプトファンの脳への運搬をさまたげるアミノ酸が少ないぶん、スムーズに運搬されると思います。

ちょっと話が長くなりましたが、まとめると、

  • トリプトファンの脳内への運搬は、ほかのアミノ酸に邪魔をされる
  • しかし、空腹時はほかのアミノ酸が少ない
  • なのでトリプトファンが脳内に入りやすくなる
  • だから空腹時にトリプトファンを摂るのが効果的

ということです。

インスリンが、トリプトファンの運搬を助ける

次に2つ目のポイント「糖分と一緒に摂る」についてです。

糖分を摂ると、からだの中で何が起こるでしょうか。よく知られているとおり、すい臓からインスリンが分泌されます。実は、このインスリンがトリプトファンの脳内輸送に役立ちます。

さきほど、バリン・ロイシン・イソロイシンなどのアミノ酸は、トリプトファンの脳内輸送をさまたげると書きました。逆に言うと、それらのアミノ酸を血液中から別の場所に移動させれば、トリプトファンを邪魔するものがなくなります。そして、それを可能にするのがインスリンなんです。

インスリンが分泌されると、バリン・ロイシン・イソロイシンなどのアミノ酸は筋肉に取りこまれます。筋肉に取りこまれた分だけ、これらのアミノ酸は血中から姿を消します。その結果トリプトファンは脳内に入りやすくなります。

サプリメントは水と一緒に飲むのが普通ですが、トリプトファンサプリに限っては果物ジュースなどと一緒に飲むのがいいと思います。ジュースに含まれる糖分が、トリプトファンの輸送を助けてくれるからです。

補足

糖分を含んでいれば何でもOKです。朝食の代わりにバナナを食べて糖分補給するのもいいと思います。バナナには糖分だけでなくビタミンB6が多く含まれていますが、それもセロトニンの合成を促してくれます。

追記①:具体的な摂取タイミング

トリプトファンは空腹時に摂るといいと上述しましたが、サプリメントの具体的な摂取タイミングを2つ考えてみました。

1つ目のタイミングは夜寝る前です。たとえば夜21時に夕食を食べたとします。寝るのは深夜0時とすれば、食後3時間は経過しています。それだけ時間が立っていれば、ほかのアミノ酸との競合は起こりにくいと思います。

2つ目のタイミングは、朝食と昼食のあいだです。たとえば朝食が7時半、昼が12時とします。その場合、9~10時にトリプトファンサプリを飲めばいいと思います。なお、午前中にトリプトファンを摂り、太陽の光をしっかり浴びることでセロトニンの生成に拍車がかかります。
(詳細:トリプトファン⇒セロトニン⇒メラトニンという流れが大切!

なので、セロトニンの生成を狙うという点では、夜よりも朝~昼にかけてトリプトファンを摂取するほうがいいと思います。

ただし、トリプトファンを飲むとすぐに眠くなる人もいるようです。普通に考えれば、トリプトファン→セロトニン→メラトニンまでの変化には時間がかかります(一説によると10時間)。なので、トリプトファン摂取後すぐには眠くならないと思うのですが、もし眠くなるようなら夜寝る前に摂るようにしましょう。

追記②:グリシンとトリプトファンの同時摂取について

安眠サプリメントにグリシンというものがあります。就寝前に摂ることによって、眠りが深くなると考えられているサプリなのですが、このグリシンもアミノ酸です。

アミノ酸ということは、グリシンとトリプトファンを同時に摂ると、すでに述べたような脳内への取り込み競争が起こるのでしょうか?

この点、私はずっと誤解していたのですが……グリシンとトリプトファンは競合しません。詳しく調べたところ「トリプトファンと競合するアミノ酸もあるし、そうでないアミノ酸もある」とわかりました。

だいぶ古い本ですが、脳の栄養 ブレインサイエンス・シリーズ 1(共立出版)には次のように書かれています。

脳内のトリプトファン濃度を高めるためには、六種の他のアミノ酸の血中濃度を下げなければならない。

ここでいう6種類のアミノ酸と言うのは、

  • バリン
  • ロイシン
  • イソロイシン
  • フェニルアラニン
  • チロシン
  • メチオニン

の6つです。この中にグリシンは含まれていません。ということで、グリシンとトリプトファンを同時に摂っても、その効果が減少することはないと思います。