メラトニンの分泌を抑制してしまう光の強さは何ルクス?

睡眠ホルモンとも呼ばれ、私たちの眠りに欠かせないのがメラトニンです。夜になると脳内で分泌が始まり、自然な眠気を誘ってくれます。

そんなメラトニンですが、夜間に強い光を浴びると、分泌が抑制されてしまうことが知られています。

1980年ころまでの研究では「2500ルクス以上の光を浴びなければ、メラトニンの分泌に悪影響は出ない」と言われていたそうです。2500ルクスというのは、コンビニ店内の明るさ以上です。夜にこれほど強い光を浴びる機会は、なかなか無いと思います。

しかし、その後の研究では「2500ルクスよりずっと暗い光でもメラトニンの分泌が阻害される」という結果が出ています。では、一体どのくらいの強さの光を浴びると、メラトニン分泌に悪影響があるのでしょうか。

普通のリビングの明るさでも、悪影響がある

次の図は、基礎講座 睡眠改善学(ゆまに書房)のデータを参考に作った図です。光の照射時間(1~3時間)と、メラトニン抑制率の関係を表しています。

● 500ルクスの光を照射した場合

500ルクスの明るさでも、1時間2時間という長さで浴びると、メラトニン分泌が抑制されることが見てとれます。3時間も浴び続ければ、抑制率は50%にも達します。

ちなみに、一般的なリビングの明るさが300~500ルクスと言われています。私は自宅のリビング(蛍光灯使用)の明るさを照度計で測ってみたことがあります。その結果、たしかに400ルクスほどの明るさがありました。

ということは、普通にリビングで過ごしているだけで、メラトニンの分泌に悪影響がありそうです。

なお、高照度(5,000ルクス)のメラトニン抑制率は次の通りです。

● 500ルクスと5,000ルクスの比較

当然ながら、5,000ルクスのほうがメラトニンの分泌を阻害します。しかし、500ルクスとの差は意外と小さいように思います。

では、逆にもっと低い照度だったらどうなるでしょうか。先の図に、200ルクスのグラフも入れてみました。

● 200ルクスの光を照射した場合較

200ルクスの場合、2時間までならメラトニン分泌に影響は無いようです。しかし、3時間浴びると抑制が現れます。

200ルクスというのは、明るさをかなり抑えたリビングの明るさだと思われます。照明に工夫をしないかぎり、毎晩200ルクス程度の光は浴びているはずです。自覚がないだけで、実はメラトニンの分泌が妨げられていた……そんな可能性は高いと思います。

夜の10時からは暖色照明を使用する

では、夜間はどういう照明環境で過ごせばいいのでしょうか?

快適睡眠のすすめ(岩波新書)という、睡眠に役立つことが分かりやすく書いてある書籍があります。その中に、次の一文が載っていました。

具体的にどのあたりが下限なのかはまだはっきりしていないが、夜の10時以降では150ルクスていどに照明を落として、あまり明るい光を浴びないほうが、リズムの安定には好ましい。

ということで、これを指針にするのがいいと思います。

少し説明を加えると……

まず、なぜ「夜10時以降」に照明を落とすのか? ですが、これはおそらくメラトニンの分泌開始時刻を考慮してのことです。メラトニンは、夜9~10時に分泌量が増加します(下図)。

● メラトニン分泌量の日内変動

つまり、メラトニン分泌が増えるタイミングに合わせて照明を落とそう、という話です。生活上の不都合がなければ、もっと早い時間(たとえば夜8時)から照明を落とすのは一向にかまわないと思います。

次に、150ルクスという照明環境をどうやって作るのか?です。これは、白熱電球を使えばいいのではないかと思います。白熱電球=普通のオレンジ色の電球です。暖色照明と言えばイメージしやすいかと思います。

あまり凝ったものを用意するのは面倒という方も多いと思います。その場合、部屋の蛍光灯の代わりに下記のクリップライトを2~3個点灯させれば、かなり暗めの照明環境になります。私自身、自分の家の照明はそんな感じにしています。

ただ、まだ照度を実際に測っていないので、本当に150ルクス以下になっているのか何とも言えませんが……
(照度を測ったら、あとで追記します)

部屋にスペースがあれば、下記のようなフロアスタンドライトも良さそうです。

なお、メラトニンを分泌させるためのポイントはこちらのページにも記載しています。参考にしてみてください。

追記:夜間に光を浴びると、夜型の睡眠リズムになる

夜間に光の刺激を浴びることの問題は、メラトニンの分泌抑制だけではありません。睡眠時間帯が後退する可能性も指摘されています。一言で言えば、「夜型の睡眠リズムになってしまう」ということです。

以下は、睡眠心理学(北大路書房)からの引用です。

5,000ルクスのような高照度光でなくても、夜間の3時間、80~160ルクスの光を照射するだけで概日リズムの位相が後退することが報告されている。これは、やや暗めの室内の明るさに相当する光量である。

概日リズムというのは聞きなれない言葉だと思いますが、ここでは睡眠のリズム(睡眠時間帯)だと思ってください。夜11時に寝ていたのに、次第に遅くなって夜12時、深夜1時……とずれていく。夜間に光を浴びると、そういうおそれも出てきます。

朝型・夜型というリズムは、ある程度体質で決まっているそうです。ちなみに私は明らかに夜型です。気を抜くとすぐ昼夜逆転しそうになります。最近は睡眠時間帯が安定していますが、それは夜間の照明環境を工夫したことも関係していると感じています。