トリプトファンのサプリが朝の目覚めと夜の入眠をサポートする

必須アミノ酸のひとつ「トリプトファン」。主に食品のタンパク質に含まれている栄養素で、睡眠に深く関わっています。

  • とにかく朝起きるのがつらい
  • 夜なかなか入眠できない

このような睡眠の悩みは、トリプトファンが緩和してくれる可能性があります。

このページでは、睡眠に対するトリプトファンの効果や、サプリメントの活用法をまとめました。なお、参考資料のリンクはページ下部に記載しています。

トリプトファンは2つの点から眠りを改善する

トリプトファンの効果については、いくつかの科学的な調査・検証があります。たとえば、脳に効く睡眠学(角川SSC新書)には乳幼児600名近くを対象にした調査が載っています。その調査では、朝食に含まれているトリプトファンの量と、寝つき・寝起きの関係を調べています。

脳に効く睡眠学(角川SSC新書)を参考に作成

この結果を見ると、トリプトファンをしっかり摂っている乳幼児ほど寝つきが良く、また寝起きも良いと言えます。また朝食で300~400mgのトリプトファンを摂れば睡眠改善できるようにも見えます。

ただし、これはあくまで乳幼児の場合です。成人の場合でも同じような結果が得られるのかは分かりません。では、成人がトリプトファンを摂ったときの調査結果はないのか?というと、睡眠学(朝倉書店)という分厚い事典には次のように書かれていました。

Markusら(2005)の若年成人の研究であるが、夕方にトリプトファンを多く含むミルクを飲んでから夜間睡眠をとると、翌日の朝の認知機能やビジランスに改善がみられることから、そのミルクが夜間睡眠を改善している可能性があることを報告している。

このように、ミルクのなかに含まれるトリプトファンが睡眠の改善と心の安定に寄与していることが科学的に検証され始めている。

ということで、トリプトファンが良質な睡眠を生み出す可能性は高いと考えられます。

では、なぜトリプトファンに睡眠を改善する効果があるのでしょうか。実は、トリプトファン自体が睡眠に関係しているわけではありません。トリプトファンは、体内に取り込まれたあとで別の物質に変化します。具体的にはセロトニンとメラトニンに変わるのですが、これらの物質が私たちの睡眠を改善します。

以下、この2つの物質について詳しく説明していきます。

セロトニンは朝の目覚めをうながす

まずセロトニンについてです。トリプトファンは体内に入って脳に運ばれると、セロトニンに変化します。

セロトニンは精神安定作用があることが知られていますが、それ以外の作用もあります。それは、朝の目覚めをうながすことです。マンガでわかる神経伝達物質の働き(サイエンス・アイ新書)には次のように書かれています。

朝日を浴びると、睡眠中はほとんど休止状態にあったセロトニン神経系が活動を始め、セロトニンを分泌するようになる。同時にノルアドレナリンなども分泌され、脳が覚醒し、活動を開始するというわけだ。

(中略)

すっきり気持ちよく起きられるのは、セロトニンがしっかり働いているからだ。逆にセロトニンの働きが悪いと、なかなか脳が活動してくれない。朝起きるのもつらくなり、ずっと眠っていたくなる。

端的に言えば、
セロトニンは脳と身体にスイッチを入れて朝起きられるようにしてくれる物質
ということです。

セロトニン生成をうながす方法はいくつかあります。たとえばリズム運動と呼ばれる運動をすることです。また、アロマテラピーで使う精油にはセロトニン分泌を促進するものがあるそうです。
(詳細:セロトニンの量を増やす3つの方法

しかし、セロトニンの原料となるトリプトファンがなければ何も始まらないはずです。そのため、トリプトファンをしっかり摂取することが大切と言えます。

メラトニンは夜の安眠をもたらす

次にメラトニンについてです。

トリプトファンは脳内でセロトニンに変化しますが、さらにもう一段階変化が進むとメラトニンに生まれ変わります。

メラトニンは別名「睡眠ホルモン」と呼ばれている脳内物質で、次のような働きがあると言われています。

  • 深部体温を下げる
  • 副交感神経を優位にして、気持ちを落ち着かせる
  • 呼吸や脈拍、血圧を低くする

これらの作用があるために、メラトニンが分泌されると人間は眠くなります。

次の図は、時刻とメラトニン分泌の関係を示しています。通常、夜9~10時ころになるとメラトニンの分泌が高まります。

しかし、トリプトファンの摂取量が足りないと、まずセロトニンが増えません。すると当然、セロトニンの変化物であるメラトニンも増加しません。その結果、寝つきが悪くなります。

またメラトニンの分泌量は加齢とともに減少することが分かっています。下記のグラフはメラトニン分泌量と年齢の関係を示しています。10代にピークを迎えたあと、メラトニンの分泌は減少の一途をたどります。

40代50代になると、寝つきの悪さや中途覚醒(夜中に目が覚める)に悩む人が多くなるそうです。これは、メラトニン不足が原因のひとつと考えられます。ということは、トリプトファンをしっかり摂ればある程度の改善ができるかもしれません。

なお、睡眠関係の書籍で調べたところ、夜に眠くなるメカニズムはかなり複雑なようです。人間の脳内には30種類以上の睡眠物質があります。睡眠物質というのは眠気を引き起こす物質で、日中起きているときに脳内にどんどん溜まっていくそうです。そしてある程度の量に達すると眠気をもたらします。なので、メラトニンの作用だけで眠くなるわけではありません。

しかし、メラトニンが眠気に関係しているのも事実です。ロゼレムという睡眠薬があるのですが、これは脳内のメラトニン受容体(メラトニンを受け取る部分)に作用することによって眠りをもたらします。

不眠改善で必要となる摂取量

トリプトファンが夜の寝つきと朝の目覚めを改善するとして、いったいどれくらい摂ればいいのでしょうか。

トリプトファンの一日の摂取量は、体重1kgにつき2mgが目安とされています(成人の場合)。体重60kgなら120mgが一日の必要摂取量です。この量は、普通の食生活をしていれば問題なく摂れます。

しかし、トリプトファンを睡眠改善に役立てるためには100mg程度では足りないと思います。諸説ありますが、睡眠の改善には500~1,000mg、うつ症状の緩和には1,000~3,000mgといった摂取量がさまざまな書籍中で提示されています。

ボストン州立病院で、L-トリプトファンについて多くの実験が行われてました。アーネスト・ハルトマン博士は、次のように報告しています。「私たちの研究において、1グラムのトリプトファンを投与すると、入眠時間が20分から10分に短縮することを発見しました。

出典:不眠症を解消する本(HBJ出版局)

トリプトファンは、さまざまな食品に含まれている必須アミノ酸であるが、量は多くない。トリプトファンのサプリメントは通常、500mg~3gの範囲で与えられる。

出典:微量栄養素小事典(西村書店)

体格などの個人差もあるので一概には言えませんが、食事から摂取する分を500mgと考えると、そこにサプリメントで500mg~1,000mgを補うのが良いと思います。

たくさん摂取したほうが睡眠にいい影響がありそうですが、過剰摂取には危険がともないます。セロトニンの脳内濃度が異常に上がることによって、セロトニン症候群になる可能性がゼロではないからです。セロトニン症候群になると、発熱や吐き気、下痢、嘔吐などが生じたり、最悪の場合は死に至ることもあるそうです。

トリプトファンを1日あたり3~6g摂取し、さらに抗うつ剤を並用するとセロトニン症候群の徴候が現れたという話があります詳細)。サプリメントを通常使用しているかぎり神経質になる必要はないですが、トリプトファンを過剰に摂るのは避けたほうが賢明と思います。

トリプトファンのサプリを使うなら

安眠をサポートするサプリメントには、トリプトファンが含まれていることが多いです。ほかの安眠成分(グリシンやクワンソウなど)と一緒にトリプトファンが配合されています。

そうした複合型サプリメントも決して悪くないと思いますが、だいたいの場合トリプトファン含有量が少ないです。100~200mg程度のトリプトファン量になっているサプリが多く、かなり頼りなく感じます。

そこで利用したいのが、アメリカで販売されているトリプトファンのサプリメントです。1カプセルあたり500mgという高い含有量でありながら、価格もリーズナブルです。日本ではなじみが無いかもしれませんが、海外ではトリプトファンのサプリはそこそこ認知されていると思います。

NOW社トリプトファンサプリ

最後に、トリプトファンのサプリを活用するためのポイントをいくつか述べておきます。

① 午前中に飲む

トリプトファン→セロトニンの変化をうながすのは太陽の光です。午前中にトリプトファンを摂って日光を浴びれば、セロトニンの生成がスムーズになると思います(ただし、夜寝る前に飲むほうが効くという人もいるようです)。

② 食事とは一緒に摂らない

食事に含まれるタンパク質は、トリプトファンの吸収(正確には脳内への輸送)をさまたげます。そのため、食事と一緒には摂らないほうが無難です。軽食ならOKだと思います。
(詳細:トリプトファンの効果を引き出すための摂取タイミング

③ 糖分と一緒に摂る

体内に糖分があると、トリプトファンが脳内に到達しやすくなります。ただの水ではなく、果物ジュースなどと一緒に飲むのがいいと思います。もしくはバナナなどの果物と一緒に摂るのも良さそうです。

④ ビタミンとミネラルもしっかり摂る

トリプトファン→セロトニン→メラトニンと変化していく過程で、さまざまなビタミン・ミネラルが使われます。私自身すべては理解できていませんが、ビタミンB6、ナイアシン、鉄、マグネシウム、亜鉛などの栄養素が必要なのだそうです。ビタミンやミネラル不足を感じている人は、マルチビタミン・ミネラルのサプリを使うのもいいと思います。